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PROJECT STORY #01

新しい農業のかたち、
「施設園芸栽培」の開発プロジェクト

MEMBER

  • 施設栽培事業部 佐藤 康久

    施設栽培事業部

    佐藤 康久

  • 製造部兼研究開発部 向井 太朗

    製造部兼研究開発部

    向井 太朗

経験や勘に頼る農業を
どうにかしたい

農業はいまだに感覚に頼る部分が多い。経験を積めば作物や畑のことは分かってくるが、世代交代の際に、親が感じ取ったことを子へ引き継ぐのは難しい。作る物や畑の条件によっても作業の内容は異なる。長年の経験と勘に依存する農業のままでいいのか、環境に左右されない新しい農業ができないか。十数年前、佐藤はぼんやりと考えていた。

施設栽培事業部 佐藤 康久ちょうどその頃、土壌を科学的に整える有機肥料の研究が進んでいたこともあり、畑がよくなる土、そして誰でも管理ができる土(=培地)を人工的につくれないか、と考えていました。そんな想いを持ち続ける中、「ANS培地」を開発した人と出会ったのです。ANS培地は団粒構造で、通気・通水性がよく保水力に優れ、根が張りやすいのが特長。これだ、と思いましたね。

製造部兼研究開発部 向井 太朗そこから当社独自のANS培地づくりが始まりました。レシピは開発者が持っていましたが、当社の体制に合った製造方法を開発する必要があったのです。今までの製品とは全く別のものづくりになると感じていましたが、とにかく挑戦するしかありませんでした。

経験や勘に頼る農業をどうにかしたい

量産に向けての研究開発は、フライパンの上から始まった

ANS培地づくりでは、大きく分けて2種類の材料を混ぜ、加熱乾燥して丸い小さな粒に加工する。この粒の集合体が団粒だ。向井たちは、材料の配合を少しずつ変えながら実験を繰り返し、適切な配合や熱のかけ方を試していった。ANS培地は粒子が水を吸着する力を考えて開発されたため、試作品に水を吸わせ、比重を考えることも大事な要素だった。

製造部兼研究開発部 向井 太朗最初はフライパンで少量生産を行うための実験からスタートしました。どんな配合でどんな熱量だったらうまく丸まるか、小さなフライパンの中からいろんな情報を拾いました。毎日フライパンをふって、ベストな配合が決まったのは半年後。次は大量生産に向けてドラム缶を使った実験を始めました。自分の手加減で調整ができるフライパンで成功しても、その実験データが量産体制に合うかは分からないからです。

施設栽培事業部 佐藤 康久製品として成立するには、高品質なものを安定して量産できなくてはいけない。そこで、くりぬいたドラム缶に材料を入れ、回転させながらバーナーで加熱加工してみました。ドラム缶を3本並べて昼夜実験し、試行錯誤を重ねるうちに、求めるレベルでの性能が実現。お客様に案内し始めました。ドラム缶でできる量には限界があるので、大量生産へ移行するために専用の工場をつくり、生産能力を上げていきました。

量産に向けての研究開発は、フライパンの上から始まった
未来のために農業をサイエンスしよう 未来のために農業をサイエンスしよう

未来のために
農業をサイエンスしよう

工場での量産化が実現し、ANS培地を使った施設園芸栽培システムとして、販売を本格的にスタートした。ハウス内でのポット栽培なので、作物づくりで重要なポイントになる土づくりが不要。水分センサーを使用して必要最低限の水と肥料を自動で管理できるので、経験や勘も不要。ANS培地のメリットを最大限に生かした栽培システムだ。
従来の土耕栽培と全く違う農法なため、当初はなかなか農家さんの理解が進まなかったが、現在は全国で導入が広がっている。決められたプロセスに従えば品質と収量を高められるというシステムに、新規就農を考える人からも問い合わせが多いという。

製造部兼研究開発部 向井 太朗必要以上の環境コントロールを目的としないので、低コストで導入でき、使っていないハウスを有効活用できるのも、このシステムの大きな魅力です。

施設栽培事業部 佐藤 康久根の環境に着目して培土を研究してきたメーカーだからできた製品。経験によって差が出やすかったこれまでの農業を一新する画期的な製品です。ANS培地で日本の農業はもちろん、世界の農業が救われるのではないか、そんな実感があります。

製造部兼研究開発部 向井 太朗目指しているのは科学的根拠を持った製品の開発です。これからも農業をサイエンスしていきたいと思っています。